健康診断で異常といわれたら

健康診断の結果を活かしましょう

健康診断の結果を見ると、たとえば肝機能(AST、ALT、γ-GTなど)や空腹時血糖値、尿酸などの項目ごとに測定数値が記入され、基準値より高い、低いなどの判定が記入されています。それらを総合して「異常なし」「要経過観察」「要精密検査」「要治療」などの判断が書かれているのが一般的なものです。この「要精密検査」「要治療」などの判断を正確に理解し、健康管理に生かすことが大事です。

 

診断結果の見方

異常なし

測定数値が正常範囲内であり、機能的に問題がないことを示しています。

要経過観察・要再検査

正常範囲を超える数値はありますが、緊急に治療を必要とする状態ではありません。ただ、この時期に数値を正常範囲に戻すよう生活改善などを行うことが、病気の予防・健康維持のために大切です。当クリニックでも生活習慣改善等のサポートをいたしますので、ご相談ください。

要精密検査

健康診断などの検査項目だけでは特定できない病気が隠れているおそれがある場合に、「さらに詳しく調べる必要があります」という結果です。したがって、検査してみても異常が見つからなかったというケースもしばしばあります。必要以上に深刻に受け止める必要はありませんが、必ず受診してください。

要治療

治療が必要な状態です。いち早い治療で進行を止め、悪化、重症化を防ぐチャンスです。できるだけ早く、躊躇なく専門医を受診してください。

個々の検査項目について

一般的な健康診断で行われる検査項目について、何のリスクを測定しているのか、測定値が正常範囲を超えると何が危険性なのかをご説明させていただきます。

メタボリックシンドローム

メタボ腹囲の実測値と、血糖、血圧、脂質の数値などから総合的に判断します。判定は「1.基準該当」「2.予備軍該当」「3.非該当」「4.判定不能」の4つで示されます。ただし、特定保健指導の対象者判定とは異なります。
メタボリックシンドロームは高血圧、糖尿病、脂質異常の生活習慣病が複数合併して内臓脂肪が過剰になった状態です。この状態が続くと動脈硬化が進み、脳出血、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まります。「1.基準該当」「2.予備軍該当」の指摘があった場合には、医師の診断を受け、治療および生活習慣の改善に取り組みましょう。

血圧

最高血圧(収縮期)、最低血圧(拡張期)のどちらか一方が正常範囲より高い場合でも高血圧となります。高血圧症では常に血管に負荷がかかった状態で、動脈硬化、脳出血、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まります。
医療機関で測ると普段よりも数値が上がってしまうことがあります。「白衣性高血圧」と呼ばれています。ご自宅で測ると正常範囲内だという方は、その結果を持参することもできます。

血糖値

血中のブドウ糖量を測って糖尿病の疑いを調べます。糖尿病は血糖値が常に高い状態になる病気で、血管に負荷がかかるため動脈硬化、脳出血、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まります。毛細血管のダメージも大きく、失明や足指の壊死、さらに腎機能障害の合併症を起こし、透析が必要になることがあります。
糖尿病は自覚症状が現れにくく、気づかないうちに重症化して網膜症、神経障害、腎症などの合併症を引き起こします。健診で異常が見つかったら、すぐにも医師の診察を受け、治療を開始しましょう。

コレステロール

血中脂質検査で善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)の量を測ります。善玉コレステロールは動脈硬化を防ぐ一方で、これが少ないと動脈硬化が進みます。悪玉コレステロールは多いと動脈硬化が進みます。脂質異常は、善玉・悪玉コレステロールのバランスや他の生活習慣病の有無などによって大きく影響を受けます。定期的に検査をして数値を見ながらコントロールしていくことが大事です。

尿酸値

尿酸は痛風の原因となりますが、血管や腎臓に大きな負担をかける物質でもあります。飲食物に含まれるプリン体からつくられます。尿酸値コントロールではプリン体摂取の制限も行いますが、むしろ総カロリーの制限、十分な水分摂取、適度な運動など総合的な管理が重要です。その上で薬物療法などを行います。腎機能障害や脱水などで数値が高くなることがあります。

肝機能

アルコールAST(GOT)、ALT(GTP)という細胞内にある酵素を測ります。細胞が壊れると増加することがわかっていて、肝疾患の目安となります。またγ-GT(γ-GTP)を測ることで、アルコールや薬による肝障害や肝炎などの病気の有無を調べます。
肝機能障害を引き起こす原因はさまざまです。健康診断で肝機能の数値に異常が見つかったら、医療機関を受診して原因を特定する必要があります。また、肝機能障害が原因で肝臓への血流が行き場を失って胃や食道などに静脈瘤をつくることがあります。これが破裂すると命にかかわることもあります。肝機能に異常があった場合には、ただちに適切な治療を行うようにしましょう。

貧血

赤血球の数、血色素量、ヘマトクリット(血液中の赤血球の容積を%表示したもの)を測り、貧血の疑いを調べます。鉄分不足などによる貧血のほか、消化器など体内での出血のために貧血が起こることもあります。健診で貧血の疑いがあった場合には、内視鏡検査によって出血の有無を確認することが重要です。

尿検査(尿潜血、糖、たん白)

尿中のブドウ糖、たん白、赤血球を検出します。異常がある場合、尿路感染症、尿路結石、腎機能障害、腎炎、糖尿病、腫瘍などが隠れている可能性があります。強い痛みを伴ったり、重篤な症状を来す病気も多いため、異常があった場合にはすぐに精密検査を受けるようにしましょう。
尿は前日や直前の飲食に結果が左右されることも多く、精密検査の結果「異常なし」ということもあります。

心電図

不整脈、狭心症、心筋梗塞、心筋症、心肥大などの心臓病の兆候を探ります。心電図と診察、問診等によって医師から「要観察」「要精検」の所見が示されます。いずれにしても健康診断で医師の所見が付いた場合にはすみやかに専門医を受診することをおすすめします。とくに息切れや胸の痛みを伴う方はただちに専門医を受診してください。

定期健診で異常があった方企業健診をお考えの担当者様